作者プロフィール

米倉健史

米倉健史のキルティングアートの作品は、
彼が描いた線画に色番号を付した「原画」に基づき、
縫製スタッフが仕上げます。

その際使用される布は
1m単位で丁寧に手染めされた貴重なシーチング生地で、
彼が1枚1枚厳しく色をチェックした生地のみが使用されます。
手染めのため大量に生産されず、
また全く同じ色がなかなか出ないのが現状です。

縫製に関しては作品ごとにますます高度なテクニックが要求され、
1枚にかかる時間も相当なものになっています。

細かなパーツひとつ、
色ひとつで、
その作品全体が台無しになってしまうことを考えると、
画材となる染布の厳選や、
細部にまで神経を使って作品を仕上げられる
熟練した縫製スタッフがいかに重要であるか
ご理解いただけるでしょうか。

彼が心に描いたイメージをできるだけ忠実に再現し、
より多くの方にお伝えするために、
このような気の遠くなるような作業を
積み重ねて作品を完成させているのです。

作品は原画に基づき縫製されますが、
前述のように手染め・手縫いで制作されるため、
厳密に言うと、同じ原画からでも
全く同じ作品を2度とつくることはできません。

《今、目の前にあるものは世界でたった1枚の作品ということになります。》

なお、お買い上げいただいた作品については、
デリケートな素材である手染めの布を使用しておりますので、
その特性として他の画材にはない温かさ、
柔らかさをお伝えできる反面、
色によっては長年のうちに若干の褪色が心配されます。

できるだけ直射日光や強烈なスポットライトを避けて飾っていただき、
「あなただけの1枚」をお楽しみいただければ幸いです。

米倉健史

2018年
2018年 詩画集「陽炎の航路/77の物語」 出版
喜寿の節目に渾身の詩画集 77点の作品掲載


2010年
詩画集「Love Chair」改訂版出版


2007年
詩画集「重なる記憶/Overlapping Memories」発刊


2004年
「DREAMER」発刊 N.E.C.とコラボレーション第2弾
わがまま気ままな夢想人達のエッセーとオリジナル・ジャズの共演


2002年
詩画音集「episode」発刊(CD付)
スピリチュアル ジャズ ユニット N.E.C.とコラボレーション


2001年
油彩画・銅版画 制作発表


2000年
詩画集「Love Chair」出版


1999年
Box Construction 制作発表
出版部門・紙飛行機舎発足
詩画集「Christmas Box」出版


1998年
絵本「かみひこうきとんだ」でボローニャ国際児童図書展賞受賞


1986年
キルトアート工房設立 作家活動に入る


1977年
布によるイラストレーション(キルティングアート)を始める


1969年
フリーのイラストレーターとして始動


1961年
日本写真専門学校フォトデザイン科卒業


米倉健史

「キルティングアート」とは布で描くイラストレーション、布で描く絵を意味する造語です。1976年、カメラマン、デザイナーを経て「独自の絵の表現」を模索していた米倉健史は、布を縫い合わせて絵を描くことを思いつき、これを「キルティングアート」と名付けました。水彩、油彩、あらゆる画材で描いてきた彼は、布を使って仕上がった絵をみて、その新鮮さに心を奪われました。見慣れていたはずの自分の絵が、今までに見たことの無い全く新しいものとして彼の心を動かしたのです。「やめたほうがいい。」「描く方が早い。」という周囲の言葉を尻目に、「これこそが自分らしさの表現かもしれない。」と布を画材に選び、試行錯誤を繰り返しながら、制作を続けました。布は温かさや柔らかさ、肌触りまでも伝えます。縫うことによってできる陰影から生まれる不思議な空間・・・仕上がるごとにますます布に魅せられていきました。

描いたのは心の中の風景。シンプルに始まったイマジネーションの風景は広がりをみせ、独自の世界を形成していきました。やがて彼自身がその世界の中で未だ見ぬ風景を探し、旅を始めたのです。

膨らみつづける彼のイメージを忠実に伝えるために「絵の具」としての布は微妙に染め分けられていきました。色数は増えつづけ、今では500色を超えています。作品ごとに表現はますます繊細で緻密になり、縫製技術の向上も不可欠です。「布を縫う」という手法から手芸の一種だと誤解を受けることもありましたが、あくまでも「アート」として独自の世界を追求しつづけるひたむきな姿勢を一人でも多くの方に知っていただけたら・・と思います。

彼の作品は「みる」よりも「のぞきこむ」方が似合います。それは彼が布を使って一枚の絵を描き、そこに一つの世界をつくりだすからでしょうか。

そこにはどこまでも続く空が広がり、巨大な雲が沸き立ち、陽は眩しいほどに差し込みます。風にふかれるまま自転車が2台。小さな小さな世界で物語がはじまります。のぞき込んでいるうちに、誰もがその世界に取り込まれていくような心地よい錯覚にとらわれることでしょう。

「米倉健史の描く物語に耳をかたむける。」そんなひと時をぜひお過ごしください。 

(文:村崎レイン)